iMacでの作業中、突然の停電でデータが消えてしまわないか、不安に感じていませんか。
特に、iMacは停電時にどうなるのか、スリープ中の停電でも影響はあるのか、といった疑問は尽きないものです。
また、デスクトップPCならではのブレーカーが落ちる問題への対策も気になるところでしょう。
この記事では、そんな不安を解消するためのiMacの停電対策について詳しく解説します。
iMacだけでなく、Mac miniの停電問題やMac miniにおすすめのUPSにも触れながら、最適な停電対策としてMacにおすすめのUPSの選び方までを網羅的にご紹介します。
重要なデータを守るiMacの停電対策
- そもそもiMacは停電時にどうなる?
- iMacのスリープ中に停電した場合のリスク
- 突然の停電が引き起こすデータ破損
- デスクトップ利用時のブレーカー対策
- Mac miniでも停電への備えは必要
そもそもiMacは停電時にどうなる?

iMacは、MacBookシリーズとは異なり本体にバッテリーを内蔵していません。
そのため、落雷や計画停電、ブレーカーが落ちるなどの理由で電力供給が絶たれると、何の前触れもなく即座にシステムがシャットダウンしてしまいます。
これは、作業中のアプリケーションが強制終了されることを意味します。
保存していなかった文書や編集中の画像、作成中の音楽データなどは、一瞬にして失われる可能性があります。
重要な作業をしている最中であれば、その損害は計り知れません。
さらに、データ消失のリスクだけではありません。
OSが正常なシャットダウンプロセスを経ないため、ファイルシステムに異常をきたすことがあります。
これが原因で、次に電源を入れた際にiMacが起動しなくなったり、特定のファイルが開けなくなったりするトラブルに発展することも考えられます。
ハードディスクやSSDといったストレージ装置自体に物理的なダメージが及ぶ可能性もゼロではなく、高価なiMac本体の故障にもつながりかねないのです。
iMacのスリープ中に停電した場合のリスク

作業を中断する際、iMacを完全にシャットダウンせず、スリープ状態で待機させている方は多いのではないでしょうか。
スリープは素早く作業に復帰できて便利ですが、この状態でも停電のリスクは存在します。
iMacのスリープモードは、現在の作業内容をメモリ(RAM)に一時的に保持することで、高速な復帰を実現しています。
しかし、メモリは電力が供給されている間しかデータを保持できません。
つまり、スリープ中に停電が発生するとメモリへの電力供給が途絶え、保持されていた作業内容はすべて消去されてしまいます。
これは、保存ボタンを押し忘れたファイルが消えてしまうのと同じ状況です。
もちろん、スリープ状態での停電が直ちにiMacの故障につながるわけではありません。
しかし、予期せぬ電源遮断であることに変わりはなく、復帰時にシステムが不安定になったり、エラーメッセージが表示されたりする可能性があります。
手軽さから多用しがちなスリープですが、停電に対しては無防備であると認識しておくことが大切です。
突然の停電が引き起こすデータ破損

停電がiMacに与える最も深刻な影響の一つが、データの破損です。
これは単に保存し忘れたファイルが消えるというレベルの話にとどまりません。
iMacのOSは、常にバックグラウンドで様々なファイルの読み書きを行っています。
例えば、システムファイルの更新やアプリケーションのキャッシュ作成などです。
もし、このような重要なファイルの書き込み処理の途中で停電が発生すると、ファイルが不完全な状態で保存されてしまいます。
この「不完全なファイル」が、データ破損の直接的な原因となります。
破損したのがアプリケーションのファイルであれば、そのアプリが起動しなくなる程度で済むかもしれません。
しかし、もしOSの根幹に関わるシステムファイルが破損してしまった場合、iMac自体が起動しなくなるという最悪の事態も起こり得ます。
いわゆる「カーネルパニック」と呼ばれる画面が表示されたり、起動途中でフリーズしたりする現象は、こうしたファイルシステムの不整合が原因であることが少なくありません。
一度破損したデータを元に戻すのは極めて困難であり、最悪の場合は初期化が必要になることもあります。
デスクトップ利用時のブレーカー対策

落雷や電力会社の都合による停電とは別に、家庭内で頻繁に発生するのがブレーカーが落ちることによる電源遮断です。
特にエアコンやドライヤー、電子レンジといった消費電力の大きな家電を同時に使用すると、契約アンペア数を超えてブレーカーが作動し、iMacの電源も一緒に落ちてしまいます。
このような状況への根本的な対策は、電力会社との契約アンペア数を引き上げることです。
しかし、賃貸物件の場合は大家や管理会社の許可が必要であったり、工事が伴ったりするため、すぐには対応できないことも多いでしょう。
言ってしまえば、ブレーカーが頻繁に落ちる環境は、iMacにとって常に停電のリスクにさらされているのと同じです。
電力の使いすぎに気をつけて生活することも一つの手ですが、うっかり同時に使ってしまいブレーカーが落ちるという事態は避けられないかもしれません。
このような日常に潜むリスクからiMacを守るためにも、後述するUPSのような自己防衛策が有効になります。
なお、特定の回路だけでブレーカーが落ちる場合は漏電の可能性も考えられます。
この場合は危険ですので、速やかに専門の電気工事業者に点検を依頼してください。
Mac miniでも停電への備えは必要

ここまでの説明はiMacを主眼に置いてきましたが、これらのリスクはApple製のデスクトップMac全般に共通します。
特に、コンパクトでパワフルなMac miniも、iMacと同様に本体にバッテリーを搭載していません。
したがって、Mac miniも停電が発生すれば即座に電源が落ち、作業中データの消失やファイルシステムの破損、ハードウェア故障といった、iMacと全く同じリスクを抱えています。
むしろ、サーバーとして24時間稼働させていたり、外部に複数のストレージを接続していたりするような使い方をしている場合、停電時の被害はより大きくなる可能性すらあります。
このように、使用しているのがiMacであれMac miniであれ、デスクトップ型のMacである以上、停電に対する備えは等しく重要です。
本体の形状やサイズに関わらず、電源トラブルから大切なデータを守るための対策を講じる必要があります。
最適なiMacの停電対策はUPSの導入
- UPSで行う具体的な停電対策とは
- UPS選びに重要な給電方式と出力波形
- MacにおすすめのUPSを選ぶポイント
- Mac miniにもUPSは有効な選択肢
- iMacとUPSの接続と設定方法
- 後悔しないためのiMacの停電対策まとめ
UPSで行う具体的な停電対策とは

ここまで停電がiMacに与える様々なリスクについて解説してきましたが、それでは具体的にどう対策すればよいのでしょうか。
その最も確実で効果的な答えが、UPS(無停電電源装置)の導入です。
UPSとは、Uninterruptible Power Supplyの略で、内部にバッテリーを搭載した電源装置です。
これをiMacと壁のコンセントの間に接続しておくことで、停電が発生してコンセントからの電力供給が止まっても、UPSが瞬時に内蔵バッテリーからの電力供給に切り替えてくれます。
この機能により、停電が起きてもiMacの電源は落ちません。
UPSが供給する電力でiMacは稼働し続けるため、その間に作業中のファイルを落ち着いて保存し、正常な手順でシステムをシャットダウンするための時間を確保できます。
これがUPSの最も基本的な役割です。
さらに、多くのUPSには「雷サージ保護機能」も搭載されています。
これは、落雷時に発生する異常な高電圧(サージ)が電源線を通じてiMacに侵入するのを防ぐ機能です。
サージは一瞬で精密な電子回路を破壊する力を持つため、この保護機能も非常に重要です。
つまり、UPSは突然の停電と落雷の両方から、あなたの大切なiMacとデータを守ってくれる、頼れる防具なのです。
UPS選びに重要な給電方式と出力波形

UPSを導入しようと決めたとき、次に直面するのが「どの製品を選べばよいか」という問題です。
UPSには様々な種類がありますが、特に重要となるのが「給電方式」と「出力波形」の2つです。
給電方式の種類と比較
UPSがどのように電力を供給するかには、主に3つの方式があります。
それぞれの特徴を理解し、用途に合ったものを選ぶことが大切です。
給電方式 | 価格 | 平常時の電力 | 切り替え時間 | 電圧安定性 | 主な用途 |
常時商用給電方式 | 安価 | コンセントから直接 | あり(数ミリ秒) | 低い | 家庭用PC、周辺機器 |
ラインインタラクティブ方式 | 中程度 | 電圧を調整して供給 | あり(数ミリ秒) | 中程度 | 家庭用・SOHOのPCやサーバー |
常時インバータ給電方式 | 高価 | 常にバッテリー経由 | なし(瞬断ゼロ) | 非常に高い | 企業の基幹サーバー、医療機器 |
常時商用給電方式は、平常時はコンセントの電力をそのまま流し、停電時のみバッテリーに切り替えるシンプルな方式です。構造が簡単で価格が安く、家庭用として最も一般的です。
ラインインタラクティブ方式は、常時商用をベースにしつつ、電圧を安定させるAVR(自動電圧調整)機能を搭載しています。電圧が不安定な環境でも機器を保護できるため、より安定性を求める方におすすめです。
常時インバータ給電方式は、常にバッテリーを経由して安定した電力を供給するため、停電時の切り替え時間がゼロです。非常に高価で専門的なため、iMacの個人利用ではオーバースペックと言えるでしょう。
iMacの停電対策としては、価格と性能のバランスから「常時商用給電方式」または「ラインインタラクティブ方式」のどちらかを選べば十分です。
出力波形の重要性
UPSがバッテリーから出力する電気の波形には、「正弦波」と「矩形波」の2種類があります。
これは非常に重要なポイントです。
正弦波(せいげんは)は、家庭用のコンセントから供給される電気と同じ、滑らかな波形です。
iMacをはじめとする精密な電子機器は、この正弦波で動作するように設計されています。
一方、矩形波(くけいは)は、カクカクとした階段状の波形です。
回路がシンプルなため安価なUPSに採用されがちですが、iMacのようなPFC(力率改善)回路を搭載したパソコンには対応しておらず、接続すると誤作動や故障の原因になる可能性があります。
したがって、iMacの停電対策としてUPSを選ぶ際は、必ず「正弦波出力」に対応したモデルを選んでください。
価格が少し高くても、機器の安全を考えれば必須の選択です。
MacにおすすめのUPSを選ぶポイント

給電方式と出力波形という基本を理解した上で、さらにご自身の環境に最適なUPSを選ぶためのポイントを2つ紹介します。
消費電力(W)と出力容量(VA)の確認
UPSには、どれだけの電力を供給できるかを示す「出力容量」があります。
これは「VA(ボルトアンペア)」や「W(ワット)」という単位で表されます。
この容量が、接続したい機器の合計消費電力よりも小さいと、停電時にバックアップできず、UPSごと電源が落ちてしまいます。
まずは、お使いのiMacの消費電力を確認しましょう。
これはAppleの公式サイトで技術仕様を確認できます。例えば、27インチiMac (2020) のCPU最大稼働時の消費電力は295Wです。
次に、iMac以外にUPSに接続したい周辺機器(外付けモニター、外付けHDD/SSD、スピーカーなど)の消費電力も確認し、すべて合計します。
そして、UPSを選ぶ際は、この合計消費電力に対して1.2倍から1.3倍程度の余裕を持った出力容量(W)のモデルを選ぶのが安全です。
これにより、機器の起動時などに発生する一時的な高負荷にも対応できます。
Mac対応の管理ソフトウェア
多くのUPSは、MacとUSBケーブルで接続することで、より高度な連携機能を利用できます。
停電を検知した際に、UPSからMacへ信号を送り、ユーザーが操作しなくても自動で安全にシャットダウンを実行してくれるソフトウェアが付属しているかを確認しましょう。
この機能があれば、外出中や就寝中に停電が起きても安心です。
UPSのバッテリーが尽きる前に、ソフトウェアが自動でファイル保存(対応アプリのみ)とシャットダウンを行ってくれます。
また、macOS標準の機能とも連携できるかがポイントです。
UPSをUSBで接続すると、システム設定(旧システム環境設定)の「エネルギー」パネルに「UPS」という項目が現れます。
ここで、バッテリー残量が何パーセントになったら、あるいは停電から何分経過したらシャットダウンするか、といった詳細な条件を設定できます。
お使いのmacOSのバージョンに対応しているか、製品仕様をよく確認することが大切です。
Mac miniにもUPSは有効な選択肢

前述の通り、Mac miniはiMacと全く同じ停電リスクを抱えています。
そのため、UPSによる保護が非常に有効な選択肢となります。
選び方の基本的なポイントもiMacの場合と変わりません。
正弦波出力で、Mac mini本体と周辺機器の合計消費電力に見合った容量のモデルを選びましょう。
Mac miniの利点の一つは、そのコンパクトさです。
この利点を活かすため、UPSもなるべく設置場所に困らない小型のモデルを選ぶとよいかもしれません。
市場にはスリムなタワー型や、テーブルタップのような形状の製品もあります。
特にMac miniをファイルサーバーやメディアサーバーとして常時稼働させている場合、UPSはもはや必須のアイテムと考えられます。
不在時の停電からシステムを自動で守ってくれる管理ソフトウェア対応のモデルを選ぶことで、安心して運用を続けられるようになります。
iMacとUPSの接続と設定方法

UPSを購入したら、正しく接続して設定を行う必要があります。
手順は決して難しくありません。
物理的な接続手順
- まず、UPSの電源をオフにした状態で、iMacやモニター、外付けHDDなど、停電時に保護したい機器の電源プラグを、UPS本体の「バックアップ用コンセント」に接続します。多くのUPSにはバックアップ機能のない「サージ保護のみのコンセント」も付いているので、差し込む場所を間違えないように注意してください。
- 次に、UPS本体の入力プラグを、壁のコンセントに直接差し込みます。延長コードやテーブルタップを介さず、壁に直接接続することが推奨されています。
- 最後に、付属のUSBケーブルを使って、iMacのUSBポートとUPSの通信用ポートを接続します。これにより、iMacとUPSが連携できるようになります。
- すべての接続が終わったら、UPS本体の電源をオンにし、続いてiMacの電源を入れます。
macOSでの設定
USBで接続すると、通常はmacOSが自動でUPSを認識します。
より詳細な設定を行うには、システム設定を開きます。
- アップルメニューから「システム設定」(古いOSでは「システム環境設定」)を開きます。
- サイドバーから「エネルギー」(古いOSでは「省エネルギー」)をクリックします。
- UPSが正しく認識されていれば、ウィンドウの上部に「UPS」というタブが表示されるので、それをクリックします。
- 「システム終了オプション」などのボタンをクリックすると、停電時の動作を設定する画面が表示されます。
- ここで、「停電後、X分経過したらシステム終了する」や「UPSのバッテリー残量がY%になったらシステム終了する」といった条件をスライダで自由に設定できます。
ご自身の使い方に合わせて、ファイルを保存して終了するのに十分な時間を確保できる設定にしておきましょう。