洗練されたデザインと高い性能で多くのユーザーを魅了するiMac。
しかし、その人気の裏で、精巧に作られた偽物の存在が後を絶ちません。
「購入したiMacがもし偽物だったら…」と不安に感じている方も少なくないでしょう。
この記事では、そんなあなたの疑問や不安を解消するため、iMacの偽物に関する情報を徹底的に解説します。
過去に日本で大きな話題となったソーテック e-oneの事例を振り返り、その後のソーテックの現在に至るまでの経緯にも触れます。
さらに、今もなお市場に偽物が多過ぎる中華製クローンの実態に迫り、その代表格であるLAVI S21iのようなモデルや、これらの多くでosはwindowsが採用されている事実、そして安易に手を出すことの危険性について、具体的かつ多角的に掘り下げていきます。
iMacの偽物の歴史と多様なモデル
- 日本で登場したソーテック e-one
- ソーテックの現在はどうなったのか
- 中国市場では偽物が多過ぎる状況
- 精巧なクローン機LAVI S21iとは
- 偽iMacの多くはosはwindows
- 中華製クローンの外観と作りの特徴
日本で登場したソーテック e-one

iMacの模倣品を語る上で、日本国内において最も象徴的な存在が、1999年に株式会社ソーテックから発売された一体型PC「e-one」です。
この製品は、iMacの登場で市場に衝撃が走った直後に発表され、そのデザインの類似性から大きな注目と論争を巻き起こしました。
e-oneは、iMacの最大の特徴であった半透明(トランスルーセント)の筐体と、丸みを帯びた一体型デザインを採用していました。
特に、ボンダイブルーを彷彿とさせる青と白のツートンカラーは、一見してiMacを強く意識したものであることが明らかです。
キーボードやマウスといった周辺機器も本体カラーに合わせてデザインされており、徹底したコンセプトを持っていました。
しかし、そのデザインは多くのメディアやユーザーから「iMacの模倣ではないか」と指摘され、発売から間もなくして製造元であるアップルコンピュータ(当時)からデザインの類似性を理由に不正競争防止法に基づき提訴される事態に発展します。
ソーテック側は「デザインはオリジナルであり、法的な問題はない」と主張しましたが、最終的に裁判所の仮処分決定を受け入れ、製造・販売を中止することになりました。
この一連の出来事は、製品デザインの独自性や知的財産権の重要性について、日本のPC業界に大きな問題を提起した事件として記憶されています。
ソーテックの現在はどうなったのか

前述の通り、e-oneで大きな注目を集めた株式会社ソーテックですが、「その後どうなったのか」と気になる方もいるかもしれません。
e-oneの販売中止後も、ソーテックはPCの製造・販売を続けていましたが、2000年代に入ると価格競争の激化などから経営状況が悪化していきました。
その後、家電量販大手の株式会社オンキヨーに買収され、その子会社として事業を継続することになります。
オンキヨー傘下では「SOTEC」ブランドのPCはしばらく存続しましたが、次第にオンキヨーブランドの製品へと移行していきました。
そして、親会社であったオンキヨーも経営環境の変化の波を乗り越えることができず、2022年に破産手続きを開始し、その長い歴史に幕を閉じました。
これらのことから、かつてe-oneを世に送り出したソーテックという企業、およびそのブランドは、PC市場の激しい変遷の中で姿を消し、現在は存在しないということになります。
中国市場では偽物が多過ぎる状況

かつて日本ではソーテックのe-oneが話題となりましたが、現在のiMac偽物市場の中心は、主に中国にあると言えます。
中国の巨大オンラインショッピングサイトなどでは、驚くほど多くの偽iMacが流通しており、まさに偽物が多過ぎる状況です。
これらの製品は、本物のiMacと並べて「ローエンドモデル」として販売されていたり、あるいは堂々とiMacを名乗って出品されていたりします。
価格は数万円程度と、本物に比べて著しく安いのが特徴です。
また、本家にはない赤や黒といったカラーバリエーションや、27インチから15インチまで多彩な画面サイズが用意されていることもあり、一見すると選択肢が豊富なように見えてしまいます。
しかし、これらの製品はApple社とは一切関係のないノンブランド品、いわゆる「山寨機(シャンジャイき)」です。
購入者がCPUやメモリ、ストレージ容量を自由に選んで注文できるBTO(Build to Order)方式を採っている店舗も多く、見た目だけiMacの「自作PC」に近い感覚で販売されています。
このような製品が公然と取引されているのが、現在の中国市場の一つの側面です。
精巧なクローン機LAVI S21iとは

数多く存在する中華製の偽iMacの中でも、特にその完成度の高さで知られているのが「LAVI S21i」というモデルです。
この製品は、単なる模倣品の域を超え、一部では「ハイクオリティなクローン」と評されるほど精巧に作られています。
LAVI S21iは、2010年代に登場した薄型iMacのデザインを忠実に再現しており、アルミニウム風の筐体やディスプレイ一体型のフォルムは、本物と見紛うほどの出来栄えです。
エッジ部分の薄さは本物にわずかに及ばないものの、非常にスリムなデザインを実現しています。
本物iMacとLAVI S21iのスペック比較
項目 | 本物 iMac (参考モデル) | LAVI S21i |
ディスプレイ | 21.5インチ | 21.5インチ |
解像度 | 1920×1080 (FHD) | 1920×1080 (FHD) |
CPU | Intel Core i5 | Intel Core i3 |
メモリ | 8GB | 4GB |
ストレージ | HDDまたはSSD | HDDまたはSSD (選択式) |
OS | macOS | Windows 7 / 8 |
ポート類 | Thunderbolt, USB など | USB, VGA, LAN など |
価格 | 15万円前後~ | 5万円前後 |
このように、ディスプレイサイズや解像度は本物と同等でありながら、CPUやメモリなどの基本性能は低く抑えられています。
また、Macの象徴ともいえるThunderboltポートは搭載されていません。
LAVI S21iの存在は、偽物iMacが単なる安価な模倣品だけでなく、一見すると区別がつきにくいレベルにまで進化していることを示しています。
偽iMacの多くはosはwindows

見た目はiMacそっくりでも、その中身は全くの別物です。
流通している偽iMacの最も大きな特徴の一つは、その多くでosはwindowsが採用されている点にあります。
iMacの魅力の一つは、Appleが独自に開発したmacOSがもたらす直感的でスムーズな操作体験にあります。
しかし、偽iMacはApple製品ではないため、macOSを正規に搭載することはできません。
そのため、内部には一般的なPCで使われるマザーボードやCPU、メモリが組み込まれており、オペレーティングシステムにはMicrosoft社のWindowsがインストールされています。
一部の販売サイトでは「OS X似のOS」などと謳っている場合がありますが、実際に届く製品にはmacOS風の見た目を模した「スキン」すら適用されておらず、ごく普通のWindowsが起動するケースがほとんどです。
言ってしまえば、これらの製品は「iMacの形をしたガワ(ケース)に、一般的なWindowsパソコンの中身を詰め込んだもの」であり、Appleが提供するソフトウェア体験やエコシステムとは無縁の存在なのです。
中華製クローンの外観と作りの特徴

中華製の偽iMacは、遠目には本物と見分けがつきにくいほど精巧なモデルも存在しますが、細部を注意深く観察すると、作りや仕様に多くの相違点が見られます。
まず、本体の質感です。
本物のiMacが精密に加工されたアルミニウムを使用しているのに対し、偽物は安価なプラスチックや品質の低い金属で作られていることが多く、触れた際の感触や重量感に違いがあります。
また、本体背面にあるAppleロゴも、本物は筐体に埋め込まれて滑らかですが、偽物はシールを貼り付けただけのもので、凹凸があったり、簡単にはがせたりすることがあります。
最も顕著な違いが現れるのが、背面のインターフェース類です。
本物はポート類が整然と並んでいますが、偽物はUSB、HDMI、LANなどのポートの配置がバラバラであったり、ポートの横に印字されている「USB」や「MIC」といった表示が、実際のポートの種類と異なっていたりします。
これは、様々な仕様のマザーボードを同じケースに流用しているためと考えられます。
さらに、本物にはないはずの光学ドライブ用のスロットらしき溝が側面に切られているものの、実際にはただの飾りでドライブは内蔵されていない、といった杜撰な作りの製品も報告されています。
iMacの偽物を見分けるポイントと注意点
- 本物とは比較にならない性能や品質
- 偽物利用に伴うさまざまな危険性
- 偽警告などウイルス感染のリスク
- シリアル番号の悪用は心配ないか
- 後悔しないiMacの偽物の見分け方まとめ
本物とは比較にならない性能や品質

偽物iMacは、見た目こそ本物に似せていますが、その性能や品質は比較になりません。
価格が安い分、内部に使用されている部品も低コストなものが大半です。
性能面では、CPUに旧世代の廉価モデル(AtomやCeleronなど)が搭載されていることが多く、本物のiMacが持つような快適な動作は期待できません。
インターネットの閲覧や簡単な文書作成程度であれば問題ないかもしれませんが、写真編集や動画エンコードといった高い処理能力を要求される作業では、極端にパフォーマンスが不足します。
ベンチマークテストの結果を見ても、その性能差は歴然としています。
品質面でも多くの問題が報告されています。
例えば、ディスプレイの表示にムラがあったり、画面がちらついたりといった初期不良は珍しくありません。
また、内部の配線や組み立てが雑で、使用中に突然動作しなくなるなどの故障リスクも高いと考えられます。
安さに惹かれて購入しても、すぐに使い物にならなくなる可能性を十分に理解しておく必要があります。
偽物利用に伴うさまざまな危険性

価格の安さや物珍しさから偽物iMacに手を出すことは、性能や品質の問題だけでなく、さまざまな危険性を伴います。
これらは単なる「安物買いの銭失い」では済まない、深刻なトラブルに発展する可能性があります。
まず、個人情報漏洩のリスクが挙げられます。
偽物iMacにプリインストールされているWindows OSは、正規のライセンス認証を受けていない海賊版である可能性が極めて高いです。
このようなOSには、利用者のキーボード入力情報を盗んだり、内部のファイルにアクセスしたりするスパイウェアやマルウェアが最初から仕込まれている危険性があります。
オンラインバンキングのID・パスワードや、クレジットカード情報などが盗まれ、不正利用される被害につながることも考えられます。
また、製品自体の安全性にも大きな疑問符がつきます。
正規の製品であれば当然クリアしているはずの安全基準(電気用品安全法など)を満たしていない可能性があり、漏電や発火といった重大な事故を引き起こす危険性も否定できません。
もちろん、故障してもAppleの保証や修理サービスは一切受けられず、販売業者に連絡しても対応してもらえないことがほとんどです。
偽警告などウイルス感染のリスク

前述の通り、偽物iMacの多くはOSにWindowsを採用しており、そのOSが海賊版である可能性が高いことから、ウイルス感染のリスクは本物のMacを使用する場合に比べて格段に高まります。
近年、Macユーザーを狙った「あなたのコンピュータはウイルスに感染しています」といった偽の警告を表示させ、不要なソフトウェアを購入させようとする詐欺広告(ポップアップ)が問題になっています。
これは本物のiMacであっても遭遇する可能性があるものですが、Windowsを搭載した偽物の場合、このような詐欺広告だけでなく、より悪質なコンピュータウイルスに感染する危険性が常に付きまといます。
セキュリティ対策が不十分な海賊版OSを使用していると、ウェブサイトを閲覧しただけでウイルスに感染したり、フィッシング詐欺の被害に遭ったりする可能性が高まります。
感染すると、PCが正常に動作しなくなるだけでなく、ランサムウェアによって内部のファイルを人質に取られ、身代金を要求されるといった深刻な事態に陥ることもあります。
シリアル番号の悪用は心配ないか

中古のiMacを購入する際などに、販売サイトに記載されたシリアル番号が第三者に知られることで、悪用されないかと心配になる方もいるかもしれません。
この点については、過度に心配する必要はないと言えます。
中古で保証期間も過ぎているようなiMacのシリアル番号が知られたとしても、それだけであなたのApple IDが乗っ取られたり、個人情報が特定されたりするような直接的な被害につながる可能性は極めて低いです。
シリアル番号は、あくまで個々の製品を識別するための番号であり、個人のアカウント情報とは直接結びついていません。
Appleの公式サイトで保証状況を確認するために使われる程度で、そこから個人情報が漏れることはありません。
ただし、注意すべきはシリアル番号そのものよりも、中古品として購入したiMacが「適切に初期化されているか」という点です。
もし前の所有者のデータやアカウント情報が残ったままだと、思わぬトラブルの原因になります。
信頼できる業者から購入し、入手後は自身で必ず初期化を行うことが、安全に利用するための鍵となります。