ゲーミングPCのスリープとシャットダウンについて、一体どっちが良いのか悩んだ経験はありませんか。
シャットダウンしないほうがいいという話も耳にしますが、そもそも電源は切ったほうがいいのか、判断に迷うことも多いかと思います。
ゲーミングPCはこまめに電源を切るべきか、それとも長時間利用しないならシャットダウンは何時間くらいからが良いのか、その具体的な基準も知りたいところでしょう。
また、基本的なスリープのやり方やシャットダウンのやり方はもちろん、気になるスリープ中の電気代、スリープ中にファンが回り続ける現象、さらにはスリープから勝手に起動するといった予期せぬトラブルまで、ゲーミングPCの電源管理には様々な疑問がつきものです。
この記事では、そうしたゲーミングPCの電源管理に関するあらゆる疑問に答え、あなたのプレイスタイルに合った最適な運用方法を見つけるための情報を提供します。
ゲーミングPCのスリープとシャットダウン、基本を解説
- シャットダウンとスリープどっちが良い?
- そもそも電源は切ったほうがいいのか?
- ゲーミングPCはこまめに電源を切るべき?
- Windowsのシャットダウン やり方を解説
- すぐ復帰できるスリープ やり方と設定
シャットダウンとスリープどっちが良い?

ゲーミングPCの電源管理において、シャットダウンとスリープのどちらが良いかという問いへの答えは、「状況に応じて使い分けるのが最も賢明」です。
なぜなら、それぞれに異なるメリットとデメリットが存在し、利用シーンによって最適な選択が変わるためです。
スリープモードの最大の利点は、作業を中断した状態をメモリに保持したまま、すぐに元の状態へ復帰できる即応性です。
ゲームを少し中断して他の用事を済ませ、またすぐに再開したいといった場面で非常に便利です。
復帰にかかる時間はわずか数秒であり、起動を待つストレスがありません。
一方、シャットダウンはPCの電源を完全に断つため、電力消費を最小限に抑えられます。
また、システムを完全にリセットするため、メモリ上に蓄積された不要なデータがクリアされ、PCの動作が不安定になった際の最も確実なリフレッシュ手段となります。
具体例として、1時間程度の短い離席であれば、すぐに作業を再開できるスリープが適しています。
しかし、就寝時や数時間以上にわたってPCを使用しない場合は、わずかな待機電力も節約でき、システムをクリーンな状態に保てるシャットダウンを選択するのが合理的と考えられます。
機能 | メリット | デメリット | おすすめの状況 |
スリープ | ・数秒で作業に復帰できる<br>・中断した状態を維持できる | ・わずかに電力を消費する<br>・システムが不安定になる可能性<br>・停電時にデータが消えるリスク | 短時間(90分~2時間以内)の離席 |
シャットダウン | ・電力消費をほぼゼロにできる<br>・システムをリフレッシュできる<br>・停電などの影響を受けない | ・起動に時間がかかる<br>・作業中のアプリを再度起動する必要がある | 長時間の不使用、就寝時、旅行前 |
そもそも電源は切ったほうがいいのか?

「PCは電源のON/OFF時に最も負荷がかかるため、つけっぱなしの方が良い」という話を聞いたことがあるかもしれません。
これは、HDD(ハードディスクドライブ)が主流だった時代の名残であり、現代のゲーミングPC、特にSSD(ソリッドステートドライブ)を搭載したモデルには必ずしも当てはまりません。
確かに、電気製品である以上、電源投入時に突入電流と呼ばれる一時的な大きな電流が流れますが、現代のPCパーツ、特に電源ユニットは対策が施されており、日常的なON/OFFで寿命が著しく縮まる心配はほとんどないのが実情です。
むしろ、PCをつけっぱなしにすることにはデメリットも存在します。
まず、当然ながら電力を消費し続けます。
また、常に通電している状態はパーツの発熱につながり、室温やPCの冷却性能によっては内部の温度を高い状態で維持してしまう可能性があります。
熱は電子部品の劣化を促進する一因です。
さらに、つけっぱなしは、OSやソフトウェアのアップデートが適用されずに先送りになったり、メモリ上に不要なデータが蓄積されて動作が不安定になったりする原因にもなり得ます。
これらの理由から、PCを長時間使用しない場合は、スリープかシャットダウンによって適切に電源を管理することが、PCを安定した状態で長く使う上で望ましいと言えます。
ゲーミングPCはこまめに電源を切るべき?

「こまめに」という言葉の捉え方にもよりますが、例えば数分から10分程度の短い離席のたびにシャットダウンするのは、あまり現実的ではなく、推奨もされません。
その理由は、PCへの負荷というよりも、単純に利便性が損なわれるためです。
シャットダウンを行うと、次にPCを使う際にはOSの起動から待つ必要があり、開いていたアプリケーションやゲームも全て手動で再度立ち上げなければなりません。
この数分の手間は、積み重なると大きな時間的ロスになります。
このような短時間の離席のために用意されているのがスリープモードです。
スリープであれば、マウスのクリックやキーボードのキー入力一つで、数秒後には離席前と全く同じ状態から作業を再開できます。
前述の通り、現代のPCパーツは頻繁な電源のON/OFFで簡単に故障するほど脆弱ではありません。しかし、だからといって短い離席のたびにシャットダウンを繰り返すのは、効率の観点から見て合理的ではないのです。
したがって、数分から1〜2時間程度の離席であれば、シャットダウンではなくスリープを活用するのが、スマートな使い方と考えられます。
Windowsのシャットダウン やり方を解説

WindowsでゲーミングPCをシャットダウンするには、いくつかの方法があります。
最も一般的で簡単な手順は、デスクトップ画面の左下にあるスタートメニューを使用する方法です。
スタートメニューからのシャットダウン
- 画面左下の「スタートボタン」(Windowsロゴ)をクリックします。
- 表示されたメニューの中にある「電源」アイコンをクリックします。
- 「スリープ」「シャットダウン」「再起動」の選択肢が表示されるので、「シャットダウン」を選択します。
これでPCは終了処理を開始し、完全に電源が切れます。
ショートカットキーを使ったシャットダウン
デスクトップ画面が表示されている状態で、キーボードの「Alt」キーと「F4」キーを同時に押すと、「Windowsのシャットダウン」というダイアログボックスが表示されます。
ドロップダウンメニューが「シャットダウン」になっていることを確認し、「OK」ボタンをクリックまたは「Enter」キーを押すことでも、シャットダウンが可能です。
完全シャットダウンの方法
あまり知られていませんが、Windowsには「高速スタートアップ」という機能が標準で有効になっています。
これは、シャットダウン時にシステム情報の一部をファイルとして保存しておくことで、次回の起動を高速化する仕組みです。
しかし、この機能が原因で周辺機器の認識不良などの不具合が起きることもあります。
システムを完全にリセットしたい場合は、「完全シャットダウン」を行うのが有効です。
やり方は非常に簡単で、電源メニューで「シャットダウン」を選択する際に、キーボードの「Shift」キーを押しっぱなしにするだけです。
これで高速スタートアップ機能を使わずに、PCの電源を完全にオフにできます。
すぐ復帰できるスリープ やり方と設定

スリープモードは、現在の作業内容をメモリに一時保存して、PCを低消費電力状態にする機能です。
シャットダウンよりもはるかに速く作業に復帰できるため、短時間の離席時に非常に役立ちます。
スタートメニューからのスリープ
シャットダウンと同様に、スタートメニューから簡単に行えます。
- 画面左下の「スタートボタン」をクリックします。
- 「電源」アイコンをクリックします。
- 表示された選択肢から「スリープ」を選択します。
PCの画面が消え、電源ランプが点滅または特定の色に変わればスリープモードに入っています。
復帰する際は、マウスを動かすか、キーボードの任意のキーを押してください。
電源ボタンやノートPCの蓋での設定
デスクトップPCの場合は電源ボタン、ノートPCの場合は電源ボタンやディスプレイの蓋を閉じた際の動作をスリープに割り当てることも可能です。
- スタートメニューを右クリックし、「電源オプション」を選択します。
- 「電源の追加設定」をクリックします。(Windowsのバージョンにより表示が異なります)
- 左側のメニューから「電源ボタンの動作の選択」または「カバーを閉じたときの動作の選択」をクリックします。
- ここで、各動作に対して「スリープ状態」を割り当てることができます。
この設定をしておけば、ボタン一つ、あるいは蓋を閉じるだけで手軽にPCをスリープ状態に移行させることができ、非常に便利です。
ゲーミングPCのスリープとシャットダウン注意点
- シャットダウンしないほうがいいという説
- シャットダウンは何時間離れる時が目安?
- 気になるスリープ中の電気代はいくら?
- スリープ中にファンが回る原因と対策
- スリープから勝手に起動する時の対処法
- 最適なゲーミングPCのスリープとシャットダウン運用法まとめ
シャットダウンしないほうがいいという説

「ゲーミングPCはシャットダウンしないほうがいい」という説は、PCの歴史的背景から生まれた考え方であり、現代のPC環境ではその根拠は薄れています。
この説の主な理由は、電源のON/OFF時にPCの部品、特にHDDに物理的な負荷がかかるというものでした。
しかし、現代のゲーミングPCの多くは、OSの起動ドライブに物理的な駆動部品を持たないSSDを採用しています。
SSDはデータの読み書きを電気的に行うため、HDDのように起動・停止に伴う物理的な摩耗を心配する必要がありません。
SSDの寿命を示す指標の一つに「TBW(Total Bytes Written)」がありますが、1回のシャットダウンで書き込まれるデータ量はごくわずかで、SSDの寿命全体から見れば無視できるレベルです。
したがって、PCパーツへの負荷を理由にシャットダウンを避ける必要性は、現在ではほとんどないと言えます。
ただし、シャットダウンをしないこと、つまりスリープモードを多用することには、利便性という明確なメリットがあります。
ゲームの途中で席を外しても、数秒で元の画面に戻れるのは大きな利点です。
要するに、「負荷がかかるからシャットダウンしないほうがいい」という考え方は古い情報であり、現代では「利便性を重視するならスリープ、PCを完全に休ませたいならシャットダウン」という、ユーザーの目的やスタイルに応じた選択の問題になっています。
シャットダウンは何時間離れる時が目安?

スリープとシャットダウンを使い分ける際、具体的に何時間PCから離れる場合にシャットダウンを選ぶべきか、その目安を知りたいという方は多いでしょう。
一般的には「90分から2時間以上」PCを使わないのであれば、シャットダウンを選択するのが一つの目安とされています。
この時間の根拠は、主に消費電力の観点から来ています。
スリープモードは低消費電力状態とはいえ、作業内容を保持するためにメモリへの通電を続けるため、わずかながら電力を消費し続けます。
一方、シャットダウンは起動時に一時的に大きな電力を消費します。
この「スリープで長時間じわじわ消費する電力」と「シャットダウンからの起動で一度に消費する電力」が等しくなるのが、おおよそ90分から2時間あたり、というわけです。
ただ、これはあくまで理論上の一つの目安に過ぎません。
前述の通り、スリープとシャットダウンの電気代の差は非常に小さいため、電気代を理由に厳密に使い分ける必要性は低いかもしれません。
むしろ、利便性やPCの安定性を考慮に入れる方が現実的です。
例えば、2時間後にまたPCを使う予定でも、一度システムをリフレッシュしたい気分の時や、夜間に雷が予想される日などは、時間に関わらずシャットダウンを選ぶのが賢明です。
最終的には、ご自身の使い方やその時々の状況に合わせて柔軟に判断するのが良いでしょう。
気になるスリープ中の電気代はいくら?

スリープモードは電力を消費し続けると聞くと、電気代が気になるかもしれません。
しかし、実際のところ、その金額は非常にわずかです。
一般的なゲーミングPCのスリープ中の消費電力は、構成にもよりますが約1Wから5W程度です。
仮に、平均的な3Wで計算し、1kWhあたりの電気料金を31円と仮定してみましょう。
- 1時間あたりの電気代: 3W ÷ 1000 × 1時間 × 31円 = 約0.093円
- 8時間(睡眠中)の電気代: 約0.093円 × 8時間 = 約0.744円
- 1ヶ月(30日間、毎日8時間スリープ)の電気代: 約0.744円 × 30日 = 約22.32円
このように、毎日8時間スリープ状態にしたとしても、1ヶ月の電気代は数十円程度に収まります。
一方、シャットダウン時の待機電力はさらに低く、1W未満がほとんどです。
その差は年間を通しても数百円程度であり、家計に大きな影響を与えるほどの金額ではないことがわかります。
参考までに、各状態での消費電力と電気代の目安を表にまとめます。
状態 | 想定消費電力 | 1時間あたりの電気代(目安) |
ゲームプレイ中 | 200W ~ 500W | 約6.2円 ~ 15.5円 |
アイドル時 | 50W ~ 80W | 約1.55円 ~ 2.48円 |
スリープモード | 1W ~ 5W | 約0.031円 ~ 0.155円 |
シャットダウン | 1W未満 | 約0.031円未満 |
※1kWhあたり31円で計算
これらのことから、電気代の節約を主目的にスリープかシャットダウンかを選択するよりも、利便性やシステムの安定性といった他の要素を重視して判断する方が合理的と言えます。
スリープ中にファンが回る原因と対策

PCをスリープモードにしたはずなのに、ケースファンやCPUファンが静かに回り続けている、という経験をしたことがあるかもしれません。
これは、PCが完全にスリープ状態に入れていないか、特定の機能が動作しているサインです。
主な原因としては、以下のようなものが考えられます。
USBポートへの給電
最近のマザーボードには、PCの電源がオフの状態やスリープ中でも、スマートフォンなどを充電できるようにUSBポートへ給電し続ける機能が搭載されていることがあります。
この機能が有効になっていると、ファンが回り続ける場合があります。
対策: PCのBIOS/UEFI設定画面に入り、「ErP Ready」や「Deep Sleep」といった省電力設定を有効にすることで、スリープ中のUSB給電を停止できます。
設定項目の名称はマザーボードメーカーによって異なるため、マニュアルを確認することをおすすめします。
ネットワークからの起動(Wake on LAN)
ネットワーク上の他のPCからマジックパケットという特殊な信号を受信して、PCを遠隔で起動させる機能です。
これが有効になっていると、ネットワークアダプターが待機状態を維持するために電力を消費し、ファンが回る原因になることがあります。
対策: デバイスマネージャーからネットワークアダプターのプロパティを開き、「電源の管理」タブにある「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」のチェックを外します。
これらの設定を見直すことで、スリープ中のファンの動作は改善されることがほとんどです。
スリープから勝手に起動する時の対処法

スリープにしたはずのゲーミングPCが、深夜などに勝手に起動してしまう現象も、よく報告されるトラブルの一つです。
これは非常に煩わしく、原因を特定して対処する必要があります。
勝手に起動する主な原因は、Windowsのシステムや接続されているデバイスに起因します。
原因を特定する方法
まず、何が原因でスリープが解除されたのかを突き止めることが大切です。
- スタートボタンを右クリックし、「イベントビューアー」を選択します。
- 左側のペインで「Windows ログ」>「システム」を開きます。
- 右側の操作メニューから「現在のログをフィルター」をクリックし、イベントソースで「Power-Troubleshooter」を選択してOKを押します。
- 一覧にスリープが解除された記録が表示されます。「スリープ状態の解除元」という項目に、原因が示されていることが多いです。(例: デバイス、タイマーなど)
主な原因と対処法
- ネットワークデバイス: Wake on LAN機能が原因の場合が多いです。前述の「スリープ中にファンが回る」の項目で解説した通り、デバイスマネージャーでネットワークアダプターのスタンバイ解除設定を無効にします。
- USBデバイス(マウスやキーボード): わずかな振動を検知してスリープを解除してしまうことがあります。デバイスマネージャーで該当デバイスのプロパティを開き、「電源の管理」タブからスタンバイ解除のチェックを外します。
- Windows Updateやメンテナンスタイマー: Windowsが自動でメンテナンスを行うためにスリープを解除することがあります。「コントロールパネル」>「セキュリティとメンテナンス」>「メンテナンス」>「メンテナンス設定の変更」と進み、「スケジュールされたメンテナンスによるコンピューターのスリープ解除を許可する」のチェックを外します。
これらの対処法を試すことで、意図しないスリープ解除を防ぐことが可能です。
最適なゲーミングPCのスリープとシャットダウン運用法まとめ
- ゲーミングPCの電源管理は、利便性や目的に応じてスリープとシャットダウンを使い分けるのが基本
- 短時間(90分~2時間以内が目安)の離席や作業中断には、即時復帰できるスリープが適している
- 長時間PCを使用しない場合や就寝時、旅行前には、電力消費を抑えシステムをリフレッシュできるシャットダウンを推奨
- 現代のSSD搭載PCでは、シャットダウンの繰り返しがパーツの寿命に与える影響はほとんど無視できるレベル
- 「シャットダウンしないほうがいい」という説は、主にHDDが主流だった時代の考え方
- スリープとシャットダウンの電気代の差はごくわずかで、年間でも数百円程度の違いしかない
- 電気代よりも、作業効率やシステムの安定性を基準に使い分けを判断するのが合理的
- Windowsの標準シャットダウンは「高速スタートアップ」機能により、次回の起動を速くしている
- 高速スタートアップはメモリ情報を一部保持するため、完全なリフレッシュにはならない場合がある
- PCの不具合時には、Shiftキーを押しながらシャットダウンすることで「完全シャットダウン」が可能
- SSD搭載機では高速スタートアップの恩恵は限定的であり、不具合防止のために無効化するのも一つの選択肢
- スリープは便利だが、落雷や停電が発生すると作業中のデータが失われるリスクを伴う
- スリープ中にファンが回り続けたり、勝手に起動したりするトラブルは、各種デバイスやWindowsの設定を見直すことで対処できる
- スリープ復帰の原因は、Windowsの「イベントビューアー」で特定できることが多い
- 最終的にどのような運用方法を選ぶかは、個人のプレイスタイルやPCを使用する環境に合わせて柔軟に決めるのが最善